つれづれ日記
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パチパチありがとうございました♪
昨日のサッカー、日本は引き分けでしたね。笑えるくらいにゴールが入らなくて、これは何のギャグかと笑いながら見てたのですが(酷)、最後の最後に引き分けに持ち込めて良かったです。次もがんばれ。
ところで、先日もやらかしてたサンレッド→ゾロたしパロ。あれからまた脳内で妄想してたら、うっかり萌えすぎるくらいに萌えてしまって、ひとりでじったんばったんしてました。あまりに萌えて一人で抱え込むには辛くなったので、以下妄想。例によって、ダブルパロです。今度はパラレル。
…ていうか、パロってみるとゾロ(レッドさん)がたしぎ(ヴァンプ様)のことを好きすぎて困る。あのツンデレヒーローはホントにもう…
昨日のサッカー、日本は引き分けでしたね。笑えるくらいにゴールが入らなくて、これは何のギャグかと笑いながら見てたのですが(酷)、最後の最後に引き分けに持ち込めて良かったです。次もがんばれ。
ところで、先日もやらかしてたサンレッド→ゾロたしパロ。あれからまた脳内で妄想してたら、うっかり萌えすぎるくらいに萌えてしまって、ひとりでじったんばったんしてました。あまりに萌えて一人で抱え込むには辛くなったので、以下妄想。例によって、ダブルパロです。今度はパラレル。
…ていうか、パロってみるとゾロ(レッドさん)がたしぎ(ヴァンプ様)のことを好きすぎて困る。あのツンデレヒーローはホントにもう…
*****
ぷらもの話
──── ピンポーン
──── ロロノアー、ロロノアー!
呼び鈴よりもそちらの声にうんざりしつつ、ゾロは重い腰を上げた。時計をちらりと見る。午後8時30分。来客があるにはずいぶんと遅い時間だ。しかし、声の主を頭に思い浮かべると、ドアを開けないわけにもいかない。
「……なんだよ」
「ロロノア、助けてください!」
アパートの扉の外には案の定、女が立っていた。真っ直ぐな黒髪を肩の辺りでそろえ、赤い縁のメガネを掛けた女。名をたしぎと言い、隣の大学で剣道の主将をやっている、彼の自称ライバルである。
その女は、手にした箱を彼に差し出してきた。小さい紙の箱だ。ちょうど、子ども用のおもちゃとかを入れるのにちょうどよさそうな大きさのものだ。夜目でみえにくいが、写真が印刷されている。
「これ!」
「……だから、なんだよ」
「プラモデルです。ロロノア、こういうの得意ですよね。助けてください!」
すがりつくような目で見られ、思わずたじろぐ。
「助けてって……」
「明日までに、これを作らなきゃいけないんですー!!」
女はもはや泣きそうな顔になって、メガネ越しに上目遣いに訴えかけてきた。また面倒なことを…、と扉を支える逆の手でこめかみを押さえ、低く問いかける。
「なんで」
「私の甥が明日遊びに来るんですけど、そのときにこのプラモデルを作って一緒に遊ぼうって約束してて……。それをすっかり忘れてたんです。今から作ろうと思ったんですけど、どうしても出来なくって……。もう、もう……!」
頭を振って、たしぎは必死の形相で宣言した。
「頼れるのは、ロロノアしかいないんです!!」
「そこがそもそも間違ってンだよ!」
世間の迷惑を考えて、声量を抑えていた彼だが、さすがに怒鳴り返す。
「第一、なんでウチに来るんだ。お前ンとこにもプラモ得意なヤツとかいんだろ。お前の後輩とか!」
「練習終わった後に気づいたんで、部室にはもう誰も残ってなかったんです。家には誰もいないし、説明書見ても意味が分からないし……。お願いします、ロロノア」
半泣きの状態で、彼女は再度プラモデルを彼に示す。しかし、ここで甘い顔をする訳にはいかないと、渋くそれを押し戻した。
「うっせ。何かあるたび俺のとこに来るんじゃねぇ! 俺はお前の後輩でもなけりゃ、同じ剣道部の人間でもねぇだろうが。第一、毎回毎回俺を倒すとかなんとか偉そうな口を叩いてんのはそっちだろ! こういうトコだけ人を頼るな!」
「だって、ロロノア。東海大学剣道部の主将じゃないですか。困ってる人を助けるのが、主将の役割でしょう?」
「困ってる東海大学剣道部の部員を助けるのが役目であって、困ってる他校の剣道部主将を助けるのが役割じゃねぇ!」
第一、困った人ってなんだ俺は便利屋か!と正論を吐くが、それであきらめるような女ならそもそもここに来てないだろう。なおも押しの一手で粘ってくる。
「ロロノアー。ちょっと、ちょっとだけでいいんですよ。番号とかもちゃんと全部書いてありますし、説明書通りに組み立てれば良いんで」
「だったら、お前が組み立てろよ。俺は明日バイトだし、早く寝たいんだよ。めんどくせーもんはとっとと持ち帰れ! それに、だ!」
女の額に指を突きつけ、彼はひとつ息を吸って、出来れば言いたくなかった台詞を吐く。
「一人暮らしの男のアパートに、女が一人でノコノコ来んな!! しかも、夜に!!」
「 ──── え?」
しかし、正論中の正論は女には何一つ響かないようだった。今までの必死の表情を一瞬すべてリセットして、きょとんと首を傾げる。
「どうしてですか?」
「……どうしてって。色々あンだろ」
「色々?」
「だから……、夜道は危ねーし」
「ああ、大丈夫です。私、竹刀持ってますから!」
笑顔で見せるのは、小脇に抱えた愛用の武器だ。いや、そういう問題じゃねぇ。とか、竹刀持ってたって意味ねぇだろ、この距離で。とか、そもそも「俺が危険」って選択肢はねぇのか、こいつには。とか色々言いたいことが一気にのど元まで押し寄せるが、上手いこと形にならない。
しかも、彼が言葉を探している隙を狙って、女は彼の脇の下をくぐり抜け、アパートに入ってしまった。さすがに焦る。
「あ、こらっ!」
「ロロノア、明日バイトなんですね。じゃあ、なるべく早く終わらせますから。早く見ちゃってください」
「そういう問題じゃねぇだろ。帰れ!」
「ロロノアが見てくれたら帰ります」
「知るか! 帰れ!」
玄関先を示す間にも、たしぎはさっさと2DKの古いアパートに上がり、狭いキッチンを通り抜けて、居間兼生活スペースへ続く敷居をまたぐ。こうなってしまっては、追い払うのにも更に手間だ。彼はため息をつき、仕方なく後を追いかけた。
彼の生活スペースは、こたつとテレビだけで一杯になっている狭い部屋だ。そこに女は座り、さっさとプラモデルをこたつの上に広げてみせた。
「ほら、ここ。どうしても、こことここがつながらなくて」
「 ──── 」
不機嫌な顔で女の頭の上からプラモデルをのぞき込む。どうやら、子どもの中ではやっている戦隊物のヒーローとそいつが乗る車を作らなければならないらしい。ヒーローの方は足だけが組み立てられた状態で、車の方はまだ一部、部品同士がつながっている。
女は右手にヒーローの胴体、左手に車の一部を持ち、困惑した体で彼を見上げた。
「ほら、同じ番号同士をつなげるって書いてあるのに、全然形が合わない」
「………」
「どうすれば良いんでしょう、ロロノア」
一目見て、女がヒーローに付けられた数字の「1」と車側に付いている英語の「I」を勘違いしているのは分かった。しかし、そういう単純なミスをわざわざ指摘してやり、しかも代わりに組み立ててやるほど彼はお人好しではない。わざと邪険に、そっぽを向く。
「知るか」
「そう言わないで、一緒に考えてくださいよ。明日の朝一で、甥が遊びに来るんです。それまでには絶対、仕上げとかないと」
「だったら、その甥っ子と一緒に作りゃあいいだろ」
「だめですよ。あの子はあの子で、別のヒーローを組み立てて持ってくる約束になってるんです。今回はお友達も一緒に、残りのヒーローたちも組み立てて来るらしくって……。5人そろっての戦隊ものじゃないですか。一人完成してないなんて分かったら、泣かれちゃいます」
「おーおー、泣かれろ泣かれろ。俺は関係ねぇし」
「もうっ! ロロノアのけち!」
「なんでだ! 甥の約束、忘れてたのはそっちだろうが!」
いいから帰れ、と出口を指さすが、たしぎはそちらを見ようともしない。
「じゃあもう、いいです。自分で組み立てます!」
「ここで組み立てんなよ。家に持って帰れ!」
「だって、ここの方が駅に近いですもん。持って帰る時間も惜しいです」
「だか ──── !!」
一人暮らしの男の部屋に、という台詞が口をついて出そうになったが、それに効果がないのは先ほどの問答で分かり切っている。しかしまさか、殴り飛ばして追い出すわけにもいかない。ゾロは頭を抱えて、低くうめいた。まったく。ここまで無防備に頼ってくるのは、信頼されてると思えば良いのだろうか。それとも、男として見てもらってないだけか。
(襲うぞ、この野郎)
本人には決して言えない台詞を、とことん鈍い女の後頭部めがけて口中で呟きながら、彼は不承不承腕を降ろす。そして、女と向かい合わせになる位置でこたつに座り、テレビの電源を入れた。
「ったく、勝手にしろ!」
「ええ、勝手にします」
売り言葉に買い言葉。それから何時間か、彼らは一言も口を利かなかった。
0時30分。
さすがに限界だ。ゾロは歯を磨きながら時計を眺めて、顔をしかめる。女にも言ったが、明日はバイトで早起きをしなくてはならない。もうそろそろ寝ないと、明日に差し支える。しかし、こたつの上は何時間か前以上に散乱していて、女のパニックも最高潮に達しているようだった。とても、完成にはほど遠い。
「 ──── おい、そろそろ」
「え。ああ、いいですよ、ロロノア。もう休んでください。私、これが完成するまで頑張りますから。一人で。独力で。自分の力だけで」
「そうやってアピールしてみせりゃ、こっちの気持ちが動くと思ったら大間違いだぞ」
「そんなこと、全然思ってないです。ロロノアこそ、さっさと寝たらどうですか。明日、早いんでしょ」
口をとがらせながら、隣の和室を指さす。ここは安い家賃ながら、居間の他に寝室用の和室も付いているのだ。ふすまで締め切るから、明かりが気になって眠れないなんてことはない。ないのだが……。
「お前、マジで帰んねーの」
「だって、甥との約束ですから」
「 ──── 」
はあ、とこれ見よがしに肩を落とし、彼は口をすすぐために台所へ戻っていった。さっぱりしたところで、明かりの灯る部屋を通り過ぎ、そこより更に狭い和室へ続くふすまを開ける。
「じゃあもう寝るけど、人の睡眠の邪魔すんじゃねーぞ」
「分かってます。お休みなさい」
プラモデルに集中している女の横顔をちらりと見て、彼はゆっくりとふすまを閉めた。
4時30分。
尿意を催し目を覚ましたゾロは、隣の部屋から明かりが漏れていることに気づき、一瞬ぎょっとした。ついで、すぐに事情を思い出す。そろそろ完成しただろうか、いや絶対無理だな、と思いつつふすまを開けると、案の定プラモデルと格闘しているたしぎの姿が ──── ない。
机の上には完成途中のプラモデルがバラバラになっていた。この状態で帰った訳はないだろうと不審に思って、女が座っていた辺りを覗き込む。そして、目にしたものに息をついた。女はそこで、プラモデルの一部を握りしめたままぐっすり眠っているのだ。必死で頑張ったが、眠気には勝てなかったということか。
上半身をこたつから出した状態で無心に眠るたしぎの顔をしばし眺め、彼は複雑な顔で後頭部を掻いて寝室に戻る。自分が使っていた毛布を抱え、そっと女の上に掛けた。
(……ったく。マジで襲うぞ、この女)
ぶつくさ言いながらも、台所と居間の境目に乗った女の頭が痛そうに思え、気にかかる。その辺の座布団を半分に折って、起こさないよう慎重にその頭を抱え、座布団を押し込んだ。途中、触れた女の髪が絹糸のように柔らかいことに気づき、心臓が跳ねる。必死で動揺を押さえ腕を離すと、女の状態はいくらかマシになったようだ。
さて、とひとまず所用をすませ、自分ももう一眠りしようと寝室へ続くふすまに手を掛ける。しかし、ゾロはそこで立ち止まり、眉間にしわを寄せたまま女の方を振り返った。正確に言うと、女が寝ているこたつの上にある物たちを。たしぎが泣きそうな顔で今日中に完成させないと、と訴えてきたプラモデルを。
ふすまに手を掛けたまま逡巡すること、しばし ──── 。
「ああ、たくっ!」
なんだってこんなことに。
そう小さくぼやいて、彼はこたつに戻った。
6時30分。
「わあっ、大変! 寝ちゃってた!」
隣の部屋の女の声に、彼は目を開いた。元々、10分と寝ていないので、意識ははっきりしている。横になったまま耳を澄ませていると、たしぎはこたつの上の変化に気づいたらしい。あれ、と不思議そうな声を出し、ややあって、きらきらした調子で喜んだ。
「すごーい、完成してる~!!」
ふすま越しでも、顔を輝かせて喜ぶ女の様子が目に浮かぶ。
「まるで、寝ている間に服を作ってくれる妖精さんみたい!」
( ──── 暢気なことを言いやがって……)
それなりに苦労したんだぞ、とあきれながら起きあがり、ふすまを開けた。一言嫌みを言ってやろうかと思うより早く、顔を上げたたしぎはパアッと顔に喜色を広げ、プラモデル2体を持って彼に見せる。箱に描かれた通りの形で、完成したヒーローとその愛車を。
「ね、ね。これ、ロロノアですか? ロロノアですよね?」
「……うっせーな。他に誰がいるんだよ」
嬉しそうな顔で見上げられるとどうにも弱く、彼は照れ隠しにうなじを撫でながら視線を逸らす。そんな様子は気にせずに、彼女は更に笑みを広げた。
「ありがとうございます! 助かります、ロロノア!」
「 ──── ちっ」
その感謝の言葉と、何より心から嬉しそうな笑顔だけで、昨日の夜からの迷惑も今朝方のいらぬ手間も寝不足も、全部許せてしまうから困ったものだ。つくづく、自分はたしぎに甘い。
「ンなことより、腹減った。お前、メシくらい作れよ。一宿の礼だ」
「え。は、はい。それはもちろん! じゃあ、台所借りますね」
あ、毛布もありがとうございます。と礼を言い、彼女はいそいそと毛布を畳んで立ち上がった。
「ロロノア、朝は和食派ですか? 洋食派?」
「あー。どっちかってーと、和食。冷蔵庫にご飯が残ってるし」
「分かりました。ちょっと待っててくださいね」
ニコリと笑って、女は台所へ向かう。少しして、トントンと何かを切る音や、何かを炒める音が聞こえてきた。色々はた迷惑な女でも、作る料理だけは美味い。それを知っているゾロは、少しばかり楽しみにテレビを点ける。ひとつあくびをし、ふとアルバイト先で落ち合うはずの、仲間の顔が浮かんだ。
(たしぎが夜中に押しかけてきたせいで、寝不足……とかいったら、どんでもねーことになるな)
おまけに朝食は彼女が作ってくれたみそ汁と卵焼き、それに簡単な野菜炒めなどと知られたら、あらぬ噂を立てられ放題だ。何のやましいこともないのだが、絶対誰にもそんなことは言えない。
そのためには……。
「はい、どうぞ。お待たせしました」
こたつ板に料理とご飯を並べ、箸を渡してくる女が誰にも話さないよう、まず念押ししておかなくては。
「 ──── あのさ、お前」
「はい?」
小首を傾げる彼女に、その説明が一番の課題だと、彼は密かに覚悟を決めた。
*****
うっかりばれるのは時間の問題で(笑)。
ぷらもの話
──── ピンポーン
──── ロロノアー、ロロノアー!
呼び鈴よりもそちらの声にうんざりしつつ、ゾロは重い腰を上げた。時計をちらりと見る。午後8時30分。来客があるにはずいぶんと遅い時間だ。しかし、声の主を頭に思い浮かべると、ドアを開けないわけにもいかない。
「……なんだよ」
「ロロノア、助けてください!」
アパートの扉の外には案の定、女が立っていた。真っ直ぐな黒髪を肩の辺りでそろえ、赤い縁のメガネを掛けた女。名をたしぎと言い、隣の大学で剣道の主将をやっている、彼の自称ライバルである。
その女は、手にした箱を彼に差し出してきた。小さい紙の箱だ。ちょうど、子ども用のおもちゃとかを入れるのにちょうどよさそうな大きさのものだ。夜目でみえにくいが、写真が印刷されている。
「これ!」
「……だから、なんだよ」
「プラモデルです。ロロノア、こういうの得意ですよね。助けてください!」
すがりつくような目で見られ、思わずたじろぐ。
「助けてって……」
「明日までに、これを作らなきゃいけないんですー!!」
女はもはや泣きそうな顔になって、メガネ越しに上目遣いに訴えかけてきた。また面倒なことを…、と扉を支える逆の手でこめかみを押さえ、低く問いかける。
「なんで」
「私の甥が明日遊びに来るんですけど、そのときにこのプラモデルを作って一緒に遊ぼうって約束してて……。それをすっかり忘れてたんです。今から作ろうと思ったんですけど、どうしても出来なくって……。もう、もう……!」
頭を振って、たしぎは必死の形相で宣言した。
「頼れるのは、ロロノアしかいないんです!!」
「そこがそもそも間違ってンだよ!」
世間の迷惑を考えて、声量を抑えていた彼だが、さすがに怒鳴り返す。
「第一、なんでウチに来るんだ。お前ンとこにもプラモ得意なヤツとかいんだろ。お前の後輩とか!」
「練習終わった後に気づいたんで、部室にはもう誰も残ってなかったんです。家には誰もいないし、説明書見ても意味が分からないし……。お願いします、ロロノア」
半泣きの状態で、彼女は再度プラモデルを彼に示す。しかし、ここで甘い顔をする訳にはいかないと、渋くそれを押し戻した。
「うっせ。何かあるたび俺のとこに来るんじゃねぇ! 俺はお前の後輩でもなけりゃ、同じ剣道部の人間でもねぇだろうが。第一、毎回毎回俺を倒すとかなんとか偉そうな口を叩いてんのはそっちだろ! こういうトコだけ人を頼るな!」
「だって、ロロノア。東海大学剣道部の主将じゃないですか。困ってる人を助けるのが、主将の役割でしょう?」
「困ってる東海大学剣道部の部員を助けるのが役目であって、困ってる他校の剣道部主将を助けるのが役割じゃねぇ!」
第一、困った人ってなんだ俺は便利屋か!と正論を吐くが、それであきらめるような女ならそもそもここに来てないだろう。なおも押しの一手で粘ってくる。
「ロロノアー。ちょっと、ちょっとだけでいいんですよ。番号とかもちゃんと全部書いてありますし、説明書通りに組み立てれば良いんで」
「だったら、お前が組み立てろよ。俺は明日バイトだし、早く寝たいんだよ。めんどくせーもんはとっとと持ち帰れ! それに、だ!」
女の額に指を突きつけ、彼はひとつ息を吸って、出来れば言いたくなかった台詞を吐く。
「一人暮らしの男のアパートに、女が一人でノコノコ来んな!! しかも、夜に!!」
「 ──── え?」
しかし、正論中の正論は女には何一つ響かないようだった。今までの必死の表情を一瞬すべてリセットして、きょとんと首を傾げる。
「どうしてですか?」
「……どうしてって。色々あンだろ」
「色々?」
「だから……、夜道は危ねーし」
「ああ、大丈夫です。私、竹刀持ってますから!」
笑顔で見せるのは、小脇に抱えた愛用の武器だ。いや、そういう問題じゃねぇ。とか、竹刀持ってたって意味ねぇだろ、この距離で。とか、そもそも「俺が危険」って選択肢はねぇのか、こいつには。とか色々言いたいことが一気にのど元まで押し寄せるが、上手いこと形にならない。
しかも、彼が言葉を探している隙を狙って、女は彼の脇の下をくぐり抜け、アパートに入ってしまった。さすがに焦る。
「あ、こらっ!」
「ロロノア、明日バイトなんですね。じゃあ、なるべく早く終わらせますから。早く見ちゃってください」
「そういう問題じゃねぇだろ。帰れ!」
「ロロノアが見てくれたら帰ります」
「知るか! 帰れ!」
玄関先を示す間にも、たしぎはさっさと2DKの古いアパートに上がり、狭いキッチンを通り抜けて、居間兼生活スペースへ続く敷居をまたぐ。こうなってしまっては、追い払うのにも更に手間だ。彼はため息をつき、仕方なく後を追いかけた。
彼の生活スペースは、こたつとテレビだけで一杯になっている狭い部屋だ。そこに女は座り、さっさとプラモデルをこたつの上に広げてみせた。
「ほら、ここ。どうしても、こことここがつながらなくて」
「 ──── 」
不機嫌な顔で女の頭の上からプラモデルをのぞき込む。どうやら、子どもの中ではやっている戦隊物のヒーローとそいつが乗る車を作らなければならないらしい。ヒーローの方は足だけが組み立てられた状態で、車の方はまだ一部、部品同士がつながっている。
女は右手にヒーローの胴体、左手に車の一部を持ち、困惑した体で彼を見上げた。
「ほら、同じ番号同士をつなげるって書いてあるのに、全然形が合わない」
「………」
「どうすれば良いんでしょう、ロロノア」
一目見て、女がヒーローに付けられた数字の「1」と車側に付いている英語の「I」を勘違いしているのは分かった。しかし、そういう単純なミスをわざわざ指摘してやり、しかも代わりに組み立ててやるほど彼はお人好しではない。わざと邪険に、そっぽを向く。
「知るか」
「そう言わないで、一緒に考えてくださいよ。明日の朝一で、甥が遊びに来るんです。それまでには絶対、仕上げとかないと」
「だったら、その甥っ子と一緒に作りゃあいいだろ」
「だめですよ。あの子はあの子で、別のヒーローを組み立てて持ってくる約束になってるんです。今回はお友達も一緒に、残りのヒーローたちも組み立てて来るらしくって……。5人そろっての戦隊ものじゃないですか。一人完成してないなんて分かったら、泣かれちゃいます」
「おーおー、泣かれろ泣かれろ。俺は関係ねぇし」
「もうっ! ロロノアのけち!」
「なんでだ! 甥の約束、忘れてたのはそっちだろうが!」
いいから帰れ、と出口を指さすが、たしぎはそちらを見ようともしない。
「じゃあもう、いいです。自分で組み立てます!」
「ここで組み立てんなよ。家に持って帰れ!」
「だって、ここの方が駅に近いですもん。持って帰る時間も惜しいです」
「だか ──── !!」
一人暮らしの男の部屋に、という台詞が口をついて出そうになったが、それに効果がないのは先ほどの問答で分かり切っている。しかしまさか、殴り飛ばして追い出すわけにもいかない。ゾロは頭を抱えて、低くうめいた。まったく。ここまで無防備に頼ってくるのは、信頼されてると思えば良いのだろうか。それとも、男として見てもらってないだけか。
(襲うぞ、この野郎)
本人には決して言えない台詞を、とことん鈍い女の後頭部めがけて口中で呟きながら、彼は不承不承腕を降ろす。そして、女と向かい合わせになる位置でこたつに座り、テレビの電源を入れた。
「ったく、勝手にしろ!」
「ええ、勝手にします」
売り言葉に買い言葉。それから何時間か、彼らは一言も口を利かなかった。
0時30分。
さすがに限界だ。ゾロは歯を磨きながら時計を眺めて、顔をしかめる。女にも言ったが、明日はバイトで早起きをしなくてはならない。もうそろそろ寝ないと、明日に差し支える。しかし、こたつの上は何時間か前以上に散乱していて、女のパニックも最高潮に達しているようだった。とても、完成にはほど遠い。
「 ──── おい、そろそろ」
「え。ああ、いいですよ、ロロノア。もう休んでください。私、これが完成するまで頑張りますから。一人で。独力で。自分の力だけで」
「そうやってアピールしてみせりゃ、こっちの気持ちが動くと思ったら大間違いだぞ」
「そんなこと、全然思ってないです。ロロノアこそ、さっさと寝たらどうですか。明日、早いんでしょ」
口をとがらせながら、隣の和室を指さす。ここは安い家賃ながら、居間の他に寝室用の和室も付いているのだ。ふすまで締め切るから、明かりが気になって眠れないなんてことはない。ないのだが……。
「お前、マジで帰んねーの」
「だって、甥との約束ですから」
「 ──── 」
はあ、とこれ見よがしに肩を落とし、彼は口をすすぐために台所へ戻っていった。さっぱりしたところで、明かりの灯る部屋を通り過ぎ、そこより更に狭い和室へ続くふすまを開ける。
「じゃあもう寝るけど、人の睡眠の邪魔すんじゃねーぞ」
「分かってます。お休みなさい」
プラモデルに集中している女の横顔をちらりと見て、彼はゆっくりとふすまを閉めた。
4時30分。
尿意を催し目を覚ましたゾロは、隣の部屋から明かりが漏れていることに気づき、一瞬ぎょっとした。ついで、すぐに事情を思い出す。そろそろ完成しただろうか、いや絶対無理だな、と思いつつふすまを開けると、案の定プラモデルと格闘しているたしぎの姿が ──── ない。
机の上には完成途中のプラモデルがバラバラになっていた。この状態で帰った訳はないだろうと不審に思って、女が座っていた辺りを覗き込む。そして、目にしたものに息をついた。女はそこで、プラモデルの一部を握りしめたままぐっすり眠っているのだ。必死で頑張ったが、眠気には勝てなかったということか。
上半身をこたつから出した状態で無心に眠るたしぎの顔をしばし眺め、彼は複雑な顔で後頭部を掻いて寝室に戻る。自分が使っていた毛布を抱え、そっと女の上に掛けた。
(……ったく。マジで襲うぞ、この女)
ぶつくさ言いながらも、台所と居間の境目に乗った女の頭が痛そうに思え、気にかかる。その辺の座布団を半分に折って、起こさないよう慎重にその頭を抱え、座布団を押し込んだ。途中、触れた女の髪が絹糸のように柔らかいことに気づき、心臓が跳ねる。必死で動揺を押さえ腕を離すと、女の状態はいくらかマシになったようだ。
さて、とひとまず所用をすませ、自分ももう一眠りしようと寝室へ続くふすまに手を掛ける。しかし、ゾロはそこで立ち止まり、眉間にしわを寄せたまま女の方を振り返った。正確に言うと、女が寝ているこたつの上にある物たちを。たしぎが泣きそうな顔で今日中に完成させないと、と訴えてきたプラモデルを。
ふすまに手を掛けたまま逡巡すること、しばし ──── 。
「ああ、たくっ!」
なんだってこんなことに。
そう小さくぼやいて、彼はこたつに戻った。
6時30分。
「わあっ、大変! 寝ちゃってた!」
隣の部屋の女の声に、彼は目を開いた。元々、10分と寝ていないので、意識ははっきりしている。横になったまま耳を澄ませていると、たしぎはこたつの上の変化に気づいたらしい。あれ、と不思議そうな声を出し、ややあって、きらきらした調子で喜んだ。
「すごーい、完成してる~!!」
ふすま越しでも、顔を輝かせて喜ぶ女の様子が目に浮かぶ。
「まるで、寝ている間に服を作ってくれる妖精さんみたい!」
( ──── 暢気なことを言いやがって……)
それなりに苦労したんだぞ、とあきれながら起きあがり、ふすまを開けた。一言嫌みを言ってやろうかと思うより早く、顔を上げたたしぎはパアッと顔に喜色を広げ、プラモデル2体を持って彼に見せる。箱に描かれた通りの形で、完成したヒーローとその愛車を。
「ね、ね。これ、ロロノアですか? ロロノアですよね?」
「……うっせーな。他に誰がいるんだよ」
嬉しそうな顔で見上げられるとどうにも弱く、彼は照れ隠しにうなじを撫でながら視線を逸らす。そんな様子は気にせずに、彼女は更に笑みを広げた。
「ありがとうございます! 助かります、ロロノア!」
「 ──── ちっ」
その感謝の言葉と、何より心から嬉しそうな笑顔だけで、昨日の夜からの迷惑も今朝方のいらぬ手間も寝不足も、全部許せてしまうから困ったものだ。つくづく、自分はたしぎに甘い。
「ンなことより、腹減った。お前、メシくらい作れよ。一宿の礼だ」
「え。は、はい。それはもちろん! じゃあ、台所借りますね」
あ、毛布もありがとうございます。と礼を言い、彼女はいそいそと毛布を畳んで立ち上がった。
「ロロノア、朝は和食派ですか? 洋食派?」
「あー。どっちかってーと、和食。冷蔵庫にご飯が残ってるし」
「分かりました。ちょっと待っててくださいね」
ニコリと笑って、女は台所へ向かう。少しして、トントンと何かを切る音や、何かを炒める音が聞こえてきた。色々はた迷惑な女でも、作る料理だけは美味い。それを知っているゾロは、少しばかり楽しみにテレビを点ける。ひとつあくびをし、ふとアルバイト先で落ち合うはずの、仲間の顔が浮かんだ。
(たしぎが夜中に押しかけてきたせいで、寝不足……とかいったら、どんでもねーことになるな)
おまけに朝食は彼女が作ってくれたみそ汁と卵焼き、それに簡単な野菜炒めなどと知られたら、あらぬ噂を立てられ放題だ。何のやましいこともないのだが、絶対誰にもそんなことは言えない。
そのためには……。
「はい、どうぞ。お待たせしました」
こたつ板に料理とご飯を並べ、箸を渡してくる女が誰にも話さないよう、まず念押ししておかなくては。
「 ──── あのさ、お前」
「はい?」
小首を傾げる彼女に、その説明が一番の課題だと、彼は密かに覚悟を決めた。
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